ストレスが原因で引き起こされる心の病気として「うつ病」のイメージが強く、それ以外の精神疾患については、よくわからないという人が多いと思います。
心の病気の症状は共通点が多くあるため、うつ病と間違われやすいのですが、「ストレスによる心の不調=うつ病」ではありません。
うつ病とよく似ているものの一つ「適応障害」についてまとめました。
適応障害とうつ病の違い
適応障害は、皇太子妃の雅子様が診断されたことで耳にしたことがある人もいるかもしれません。
厚生労働省のページでの「適応障害」の説明はこちらです。
適応障害は、ある特定の状況や出来事が、その人にとってとてもつらく耐えがたく感じられ、そのために気分や行動面に症状が現れるものです。たとえば憂うつな気分や不安感が強くなるため、涙もろくなったり、過剰に心配したり、神経が過敏になったりします。また、無断欠席や無謀な運転、喧嘩、物を壊すなどの行動面の症状がみられることもあります。
ストレスとなる状況や出来事がはっきりしているので、その原因から離れると、症状は次第に改善します。でもストレス因から離れられない、取り除けない状況では、症状が慢性化することもあります。そういった場合は、カウンセリングを通して、ストレスフルな状況に適応する力をつけることも、有効な治療法です。
適応障害は、「ある特定の状況やできごと」がストレスとなっていることが原因で、日常生活や人間関係などに不安感や抑うつ気分がでている状況です。
適応障害は、原因となるストレスから離れると症状を改善します。
仕事や職場がストレスの原因となっている場合、症状が出るのですが、休みの日に趣味をしたり、旅行に行ったりして楽しむことはできるのです。
うつ病は、環境か変わっても気分が晴れないので、休みの日でも憂鬱な気分が続き何かを楽しむ気分になれません。
この点が適応障害とうつ病大きな違いと言えます。
適応障害とうつ病の症状の違い
適応障害は、不安、意欲の低下、食欲不振、倦怠感などうつ病と同じような症状がみられます。
ただ、うつ病と大きく違うのは、このような抑うつ状態の持続性です。
うつ病は持続的な憂鬱感や興味・関心の喪失や食欲の低下、不眠などが2週間以上続きます。
適応障害は、ストレスの原因から距離を置くと症状が緩和され、趣味などを楽しむ余裕が出てきます。
ただし、適応障害が慢性的に続くとうつ病に移行する危険性があるので、適応障害はうつ病ともかかわりが深い病気でもあります。
私が適応障害を発症した原因と症状
会社員として働いてて10年経った時に私の上司が、その上の上司とけんかをして急に退職することになりました。
部署内でその上司の次に社歴が長かったのが私であり、私は部署の責任者をすることになりました。
これが私にはとても大きな精神的な負担でした。
私は人のサポート的な仕事は非常に得意で、性格的にも向いていると感じているのですが、人の上に立ったり、人に指示しマネージメントすることはあまり得意ではありません。
しかし、責任者、管理職となったからには、部署をまとめ、仕事の方向性、部下の指導をしなければいけません。
私を含め7名の部署だったのですが、部下それぞれに考え方があるので、仕事内容の不満、納得がいかないことなどをぶつけられることもありました。
私が「こうするんだ」ということを強く示してリーダーシップを発揮できればよかったのですが、そのことが私にはストレスでしかありませんでした。
次第に部下の1人(年齢は私より上)の私に対する態度がとても高圧的になりました。 私のやり方に納得がいかなかったのでしょう。
同じ部署内の他の同僚などに対応する時は笑顔で普通に話しているのですが、私にはとてもきつくあたってくるようになりました。
そのことも私はとてもショックで、ますますリーダーとしての自信をなくし、その部下がいる前では話すことすら心臓がバクバクして極度の緊張状態になるようになりました。
私に現れた身体の不調
- 夜眠れない
- 苦手な彼と話そうと思うと鼓動が早くなる
- 突然涙が出てくる、泣いてしまう
- 朝仕事に行こうとすると胸が苦しくなる
- 食欲がなくなる
その部下と関わらない仕事はスムーズにできるのですが、その部下と関わる必要がある仕事は後回しにしてしまい、仕事が滞っていくようになったのです。
今までは会社が楽しく、休むことが嫌だったくらい仕事人間でした。
しかし、管理職になり部下との関係がうまくいかなくなってから、その部下がいる日は「仕事に行きたくない」ので夜眠れないのですが、その部下が休みや出張でいない日は「仕事に行きたくない」という気持ちが出てこず、スムーズに眠ることができました。
こういった状況からも、私の場合は「適応障害」を起こしているストレス因は、確実にその部下との関係性でした。
適応障害の対処法
適応障害の治療としては、3つの方法がアプローチがあります。
①ストレスの原因を除去する
適応障害は、「ある環境や状況、人間関係などに適応できないこと」が発症の原因です。
そのため、その環境から離れれば症状は改善します。
仕事や職場環境、職場の人間関係が原因の場合は、「休職する」、「部署異動をする」、「退職・転職する」ことなどがあります。
②自分の適応力を高める
ストレスの感じ方は人ぞれぞれ違います。ストレスに強い人もいれば、ストレスに弱い人もいます。
「適応力を高める」ということは、ストレスとあまり感じないように受け止め方を変えるということです。
ただ、何十年もかけて築き上げた性格を変えるということは、簡単ではありません。専門家のカウンセリングを受けながら、時間をかけて気長に続けていくことが必要です。
③情緒面や行動面への介入
不安や不眠、うう状態に対してお薬で対応する薬物療法です。
「症状に対して薬を使う」対症療法なので一時的に症状は治まりますが、根本的な治療にはなりません。
私が適応障害を乗り越えた方法
①退職したいと上司に伝えた
まず、私の場合は絶対にお薬を飲まないと決めていました。
私が適応障害になった原因は、職場での後輩との人間関係だったので最終手段として退職しても薬物療法はしないつもりでした。
「もうこのままでは、部署をまとめていけない」「後輩との関係も修復できそうにない」と限界を感じた私は職責が上の上司に「辞めたい」と相談しました。
その上司は、私の突然の退職の申し出に非常に驚いていました。
その上司は全国を飛び回っており、月に数自治しか顔を合わさないので、何の問題もなく仕事をしているように見えていたようです。
私の心の中では苦しさでいっぱいで今にも潰れそうだったのに、まったく伝わっていなかったのです。
私が後輩との関係のことを告げ、「もう仕事を続けていくことができそうにない」ということを打ち明けると、「辞めることはいつでもできるんだから、一旦、休職してゆっくり休んでみなさい。時間と距離を置けば、また変わるかもしれない。」と温かい言葉をかけてくださいました。
その時の私は完全に視野が狭くなっていたので、辞めることしか頭にありませんでした。
会社を辞めても転職先も決まっていなかったので、「どうせ家でゆっくりするなら休職という選択でもいいかもしれないな」と休職させてもらうことになりました。
②休職したことによる体調の変化
休職することを選択したものの、実際に休みに入る前に私がやっていた仕事の引継ぎなどをしなければいけません。
私の次に職歴が長かったのが、私のストレスの原因である後輩だったので、仕事の引継ぎをすることが何よりも苦痛でたまりませんでした。
「彼に引継ぎのために会話をしなければいけないなら、辞めた方がまし」と何回思ったか数え切れません。
「私が休職することに対して彼はどう思っているだろうか」「迷惑をかけられたことに対して腹を立てているだろう」などいろいろなことを考えてしまい、夜眠れない毎日でした。
私の見方になってくれていた上司から「簡単な引き継ぎ事項を紙に書いて渡すだけでもいいか」と言われながら、なんとか仕事の連絡事項を告げて休職期間に入りました。
いざ、休職してみる少しずつ仕事のことは頭から離れていきました。ストレスの原因の彼とも会わないので、いろいろな症状が出なくなりました。
休職で改善された症状
- 不眠がなくなった
- 涙が出ることがなくなった
- 動悸がしたり、心臓がバクバクすることがなくなった
- 耳鳴りが止まった
- 憂鬱な気分がなくなった
- 笑顔で家族と話せるようになった
- 食欲が出るようになった
③休職中にやるべきこと
上司との話で「まず1カ月休職する」との約束をしていました。
最初の1週間くらいで症状がよくなり、気分も楽になりました。外に出かけたり、気分転換やリフレッシュをして楽しい気分にもなることができました。
しかし、休職期間も後半に入ると気分が憂鬱になる日が出てきました。
そりゃそうですよね。休職期間が終わってまた会社に戻れば、同じ環境が待っているのですから。
休職して心身ともに回復しても、ストレスの原因が残っている職場に復職すれば、また適応障害が再発してしまいます。
なので、私は2つの行動をしました。
1つは休職期間中に上司と面談の機会を設けてもらい、部署異動のお願いをしました。
私にできることは部署異動のお願いまでで、それが受け入れられるかどうかは会社の判断なので結果はすぐにはわかりません。
もし、部署異動ができず同じ環境に戻るのであれば、退職するしかないと思っていたので、体調が回復している間に転職活動も合わせて行うようにしました。
もう1つは、転職エージェントの会社3社に登録をしました。
そして、コンサルタントの人とのカウンセリングを受け、今の私が転職できそうなところを提案してもらいました。
実際に転職活動をして、意外と転職先候補がたくさんあることがわかり、「今の職場がダメでも他がある」と思えたことは思った以上に大きな心の安心になりました。
休職する前の精神状態では、転職活動すらする気力がありませんでした。
しかし、休職して精神状態も落ち着いたことで、冷静な判断ができるようにもなり、「勢いで辞めてしまうのではなく、ちゃんと次の準備をしておこう」と思えるようにもなりました。
転職エージェントの方と話していると、私のように職場の人間関係のストレスで精神的に病んでしまい、転職する人もたくさんいるとのことでした。
そうした実際の事例なども教えてもらうと「悩んでいるのは私だけじゃないんだ」という心強さにもなりました。
私の場合は、その後、部署異動が認められたので、実際に転職活動をすることなくストレスの原因から離れることができました。
もし、今私と同じように苦しんでいる人に伝えたいのは、苦しい環境からは逃げてもいいんです。
休職でも異動でも転職でもいろいろな方法があります。今の環境から離れるための最善の方法を探してみてください。
できれば、まずは休職や異動がおすすめですが、やむを得ない場合は退職するという選択肢もありです。
ただし、心身が不安定な時に勢いで会社を辞めてはいけません。
まずは転職エージェントで相談してください。
転職で失敗する人は自分一人で転職活動をしてしまうからです。1人でできることには限界があります。しかも心身ともに疲れている時は、ミス判断をしてしまいがちです。
転職のプロに相談して、しっかりアドバイスをもらいましょう。きっと新しい道が開けるはずです。